半年前は月収10万円、現在は月収40万円。この期間で彼女は特別なスキルを身につけたわけではありません。
言ってしまえば、仕事を変えただけ。タクシードライバーへの転職は決して難しいことではないんです。
私たちは、女性が職業を選ぶ際に、当たり前にドライバーが候補として挙がってほしい。
女性ドライバーならではのメリットを掘り下げるべく、彼女にインタビューを打診したところ、
「顔を出さないなら」という条件で受けてもらえることになりました。
時給50円アップに心躍っていた1年前
ーー:前職はスーパーでパートとして働いてたんですよね?
はい。レジを打ったり、品出ししたり。7年くらい働いてたのかな。
ーー:スーパーで働きはじめた理由は?
特にないんですよね。家から近かったのと、…私、20代前半で結婚したので、社会人経験がなくて。
子育てが落ち着いていざ働こうとしたとき、あまりにも選択肢がないことに愕然としました。
ーー:就職活動はされたんですか?
しました。でも、30代後半で職歴も一芸もないのは、やっぱり厳しかったですね。
求人広告に未経験者歓迎と記載されていても、面接に行ったら
「やっぱり経験者がいいんだよね」って言われることが多くて、就職活動を断念しました。
ーー:スーパーでの時給はどれくらいでした?
最初は1000円だったかな。ちょっとずつ上がっていって、最終的には1180円になりました。
一気に50円上がったときは嬉しかったですね。前よりも贅沢できるぞって心が躍りました。
ーー:なぜそこからタクシードライバーになったのでしょう?
たまたま地下鉄女性専用車両に乗ったときに、「恋愛シミュレーション型採用サイト」の広告を見たんですよ。
ーー:うちが作ったサイトですね。あの広告を見てエントリーされたのは知らなかったです。
サイトにリンクしてみたら、女性ドライバーが仕事中にお客様に恋するっていうゲームで、
「何だこれ?」って思いました(笑)。でも、プレイしていく中で、
女性ドライバーが働きやすい会社であることが伝わってきたんですよ。
ーー:その場でエントリーされたのですか?
家に帰ってから夫に相談しました。夫は「ドライバーは男性の仕事」というイメージを持っていましたが、
採用サイトを見せたら、「これくらい女性を歓迎してる会社ならいいんじゃない?」って言ってくれて。
返信がなかったらなかったでいいやと思ってエントリーしました。
女性ドライバーに安心する女性客は多い
ーー:車の運転は好きでしたか?
まぁまぁって感じですね。得意ではなかったです。狭い道は苦手でしたし、車庫入れは
何回もやり直してましたから。面接のときにそれを言うと、「研修で何とかなるよ」って言われました。
ーー:今ではもう完全に慣れてますよね。スイスイ運転されている姿が印象的です。
この間子どもを乗せたとき、上手くなったねって言われたんですよ。
「そりゃプロだから」ってクールに振る舞ったけど、内心はすごく嬉しかった(笑)。
運転に慣れたというか、安全運転に対する意識が高まったんだと思います。
私の中では、運転が上手いってことは、安全運転ができることだと捉えていて。
ーー:一発で車庫入れできたり、華麗にハンドルをさばいたりすることが上手いではないと。
そうそう。むしろ、その辺の技術はお客様からは全く求められません。
ーー:いきなり売上80万円を上げたときは驚きました。
AIシステムを頼りに運転してただけなので、私は全然すごくないんですけどね。
ーー:女性であることがプラスに働いている実感はありますか?
あるある。女性のお客様から「女性のドライバーさんは安心します」と言われることは多いです。
やっぱり、女性同士だから安心できることってあるんですよ。それは私が逆の立場でも思います。
もし一人暮らしをしていて家を引っ越すなら、女性スタッフしかいない引っ越し屋さんに頼みたいですし。
ーー:男性のお客様から気に入られることは?
それもありますね。つばめをわざわざ選んで乗車する男性のお客様は多いです。
チップをもらうこともありますよ。愛嬌は女性の特権だから、それは活かさないとね(笑)。
ワークスタイルを臨機応変にチェンジできる
ーー:前職から給与が倍になって生活は変わりましたか?
マイカーを購入しました。
ーー:え!? 本当ですか?
うん(笑)。私、意外と金銭欲があることに気付きました。
これまでは必要最低限のお金さえあればいいやって思ってたんですけど、
最初のお給料をもらったとき、「もっと稼いでみたい」という欲が出てきて。
次の日からガツガツとお客様を探すようになりました。
ーー:40代にして、新しい自分を見つけたわけですね。
タクシーを探している人たちって、どんな時間帯にもたくさんいるんですよ。
電車が遅れて急いでるサラリーマンとか、道に迷ってる観光客とか。
自分次第でいくらでもお客様を探せるし、それが稼ぎに直結するのも楽しいですね。
ーー:ヘソクリも貯めてます?
貯めてないことにしておいてください(笑)。
ーー:女性ドライバーがもっと増えてほしいですか?
うん。社員旅行でワイワイしたい。
ーー:女性ドライバーの採用には今後より力を入れていきますね。
では、最後に何かアピールしたいことがあれば教えてください。
働き方を選べることかな。2勤1休制の日勤でもいいし、土日休みの昼勤務でもいいし、
雇用をパートに切り替えて時短勤務もできる。女性は男性と比べてライフイベントが多いので、
ワークスタイルを臨機応変にチェンジできることはアピールしておきたいですね。